【短編小説】ビスケット

novel

誰も何も言ってくれなかった…

私は落ち込みながら調理実習室でビスケットを焼いていた。ほんのりバターの焼けるいい匂いが部屋に充満している。

私自身は活発で明るい人懐っこい性格だと自覚しているつもりだけど、周りの評価は違うみたいでどうも根暗とか思わてるようだ。

人付き合いは苦手ではないんだけれど、どうも私はとっつきにくいらしくなかなか親しい友人というのができない。

気が付けば高校3年生になった。

中学からの友人もいるが高校に入ってからは疎遠になっていた。私から話題を振ってもみんな頷くだけで話が広がらないし、私もみんなの話になかなか乗り込んでいけてなかった。

たぶん私がわるいんだろうな・・・

私はこのままじゃいけないっておもって、髪をばっさり切った。

中学の時から伸ばしはじめて背中まで伸びた髪が私の根暗というイメージになってるのかなとおもって思い切ってショートにまで切ったのだ。

元々ちょっと丸顔だったので中学のころはショートだったのだが高校にはいってちょっと大人に見られたくて伸ばしていたのだ。

美容院に頑張っていったのに・・・

何も言ってくれないのは関心がない証拠。私はどんどん落ち込んでいってしまう。

わたしは部活動に参加するために部室である調理実習室にはいっても、みんな何も言わずに用事があるっていって帰っていった。

一人残った私はそのまま帰る気分にもなれず、ビスケットを焼いているのだ。

ちーん!

そんな私の気持ちを代弁してるのかレンジが時間がたった音を鳴らす。私は着けたままになってたミトンをみてレンジを開ける。

(ほとんど割れているわね・・・)

ビスケットは1度焼きの段階であったが、半分ぐらい割れていた。一度取り出し冷ましてもう一度焼くのが私のやり方だ。

ビスケットはに(2)どやく(8)で2月28日がビスケットの日って聞いたことがある。

割れてるビスケットを見ながら捨てるのももったいなく思い、せっかくだから食べてみる。

水分が飛んでない1度焼きのビスケットはしっとりしているがこれはこれで嫌いじゃない。

半分食べ終わったところでもう一度レンジに入れてビスケットを焼く。

私は今日の部活動の記録を書くべく、連絡帳を開いた。

そこに書いてあった文章をみて私は目を見開いた。

部活の仲間や部活動に関係のないクラスのみんなから私にメッセージが1ページいっぱいに書いてあったのだ。

「先輩、失恋したからって落ち込まないでください。」

「長い髪綺麗でしたのに、でも短い髪も綺麗でかわいいです」

「何かあったらいつでも相談のるよ」

でも一番端っこに書いてあった文をみて私はさらに驚いた。

「先輩に伝えたいことがあります。ビスケットが焼けるときに会いに行きます」

そこにはいっこ下の大好きな後輩の名前と言葉がつづられていた。ふとレンジをみるとあと1分ぐらいでビスケットが焼ける。

室内には1度焼きのときに比べてちょっと焦げた匂いがまじった甘ったるい匂いが充満してた。

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